『万葉集』中、ハギをよむ歌 
 

→ヤマハギ

 芽・芽子と書いてハギと読む。
 また、「開く」をさく、「落る」「零る」を散る、と読む。


長歌

 やすみしし 吾が大王(おほきみ)の 高敷かす 日本(やまと)の国は ・・・
 八百万
(やほよろづ) 千年を兼ねて 定めけむ 平城(なら)の京師(みやこ)は ・・・
 露霜の 秋去り来れば 射駒山 飛火
(とぶひ)が嵬(たけ)
 芽の枝を しがらみ散らし 狭壯鹿
(さをしか)は 妻呼び動(どよ)む ・・・
     
(6/1047,田辺福麻呂。寧楽の故郷を悲しびて作る歌)

 三諸の 神邊
(かむなび)山に 立ち向ふ 三垣の山に
 秋芽子の 妻を枕
(ま)かむと 朝月夜 明けまくおしみ
 足ひきの 山響
(やまびこ)(とよ)め 喚(よ)び立て鳴くも
    
(9/1761,柿本人麻呂。鳴く鹿を詠む)

 秋芽子を 妻問ふ鹿こそ 一子
(ひとりご)に 子持てりといへ ・・・
    
(9/1790,読人知らず)

 ・・・ 吾が思ふ 皇子の命は ・・・
 九月の しぐれの秋は 大殿の 砌しみみに 露負いて 靡ける芽子を
 玉たすき 懸けて偲はし ・・・
   
(13/3324,読人知らず。挽歌)

 ・・・ あきはぎ(秋萩)の ち(散)らへる野辺の はつを花 かりほ(仮廬)にふ(葺)きて ・・・
     
(15/3691,葛井連子老)

 ・・・ はだすすき 穂に出づ秋の 芽子の花 にほへる屋戸を ・・・
     
(17/3957,大伴家持)

 ・・・ 秋づけば 芽子開きにほふ 石瀬野に 馬だきゆきて ・・・
     
(19/4144,大伴家持)
 


短歌

花への期待
 吾が待ちし 秋は来たりぬ 然れども 芽子の花ぞも 未だ咲かずける
     
(10/2123,読人知らず)
 我が門に 禁
(も)る田を見れば さほ(佐保)の内の
   秋芽子すすき 念
(おも)ほゆるかも (10/2221,読人知らず)
 秋風は 急(と)くとく吹き来(こ) 芽子の花 落らまく惜しみ 競ひ立つ見む
      (10/2108,読人知らず)
 夕去れば 野邊の秋芽子 末
(うれ)若み 露にそ枯るる 金(あき)待ちがてに
     
(10/2095,柿本人麻呂)
 秋芽は 咲くべくあるらし 吾が屋戸(やど)の 浅茅の花の 散りゆく見れば (8/1514,穂積皇子)
 我が屋前
(やど,には)の 芽子の末(うれ)長し 秋風の 吹きなむ時に 開かむと思ひて
     
(10/2109,読人知らず)
 吾が屋外
(やど)に 殖え生ほしたる 秋芽子を 誰か標(しめ)刺す 吾に知らえず
     
 (10/2114,読人知らず)
 この暮
(ゆふべ) 秋風吹きぬ 白露に あらそふ芽子の 明日咲かむ見む
     
 (10/2102,読人知らず)
 春日野に 咲きたる芽子は 片枝は 未だ含
(ふふ)めり 言な絶えそね (7/1363,読人知らず)
 高円の 野辺の秋芽子 この頃の 暁露に 開きにけむかも
(8/1605,大伴家持)

花さく
 見まく欲りし 吾が待ち恋ひし 秋芽子は 枝もしみみに 花開きにけり
     
(10/2124,読人知らず)
 春去れば 霞隠りて 見えざりし 秋芽子咲きぬ 折りて挿頭さむ
(10/2105,読人知らず)
 妹が目を 始見
(みそめ)の埼の 秋芽子は この月ごろは 落りこすなゆめ
     
(8/1560,大伴坂上郎女)
 白露に あらそひかねて 咲ける芽子 散らば惜しけむ 雨な零りそね
     
(10/2116,読人知らず)
 何すとか 君を厭はむ 秋芽子の 其の始花
(はつはな)の 歓(うれし)き物を
     
(10/2273,読人知らず)
 芽子の花 咲けるを見れば 君にあはず 真
(まこと)も久に 成りにけるかも
     
(10/2280.読人知らず)
 秋芽子に 恋ひ尽さじと 念へども しゑやあたら
(惜)し 又もあはめやも
      
(10/2120,読人知らず)
 大夫
(ますらを)の 心は無しに 秋芽子の 恋のみにやも なづみて有りなむ
     
(10/2122,読人知らず)
 吾が岳に さを鹿来鳴く 先芽
(はつはぎ)の 花嬬(はなづま)問いに 来鳴くさを鹿
     
(8/1541,大伴旅人)
 咲けりとも 知らずし有らば 黙然
(もだ)も有らむ 此の秋芽子を 視せつつもとな
     
(10/2293,読人知らず)

野にさく
 秋風は すずしくなりぬ 馬並めて いざ野に行かな 芽子の花見に
(10/2103,読人知らず)
 おみなへし 秋芽子交る 蘆城野
(あしきの)は 今日を始めて 万代(よろづよ)に見む
     
(8/1530,読人知らず)
 をみなへし あきはぎしの
(凌)ぎ さをしか(鹿)
   つゆ
(露)わけな(鳴)かむ たかまと(高円)のの(野) (20/4297,大伴家持)
 沙額田
(さぬかだ)の 野辺の秋芽子 時なれば 今盛りなり 折りて挿頭さむ
     
(10/2106,読人知らず)
 草枕 たび行く人も 往き触らば にほひぬべくも 開ける芽かも
 伊香山
(いかごやま) 野辺に開きたる 芽子見れば 公の家なる 尾花し思ほゆ
     
(8/1532;1533, 笠金村)
 をみなへし 秋芽た折れ 玉鉾の 道行裹
(みちゆきつと)と 乞はむ児がため
     
(8/1534,石川老夫)
 事更に 衣は摺らじ おみなへし 咲く野の芽子に にほひて居らむ
(10/2107,読人知らず)
 吾が衣 摺れるにはあらず 高松の 野邊行きしかば 芽子の摺れるそ
(10/2101,読人知らず)
 雁鳴
(かりがね)の 来喧かむ日まで 見つつ有らむ 此の芽子原に 雨な零りそね
     
(10/2097,読人知らず)
 霍公鳥
(ほととぎす) 音聞く小野の 秋風に 芽開きぬれや 声の乏しき
     
(8/1468,小治田広瀬王)
 鶉鳴く 古りにし郷の 秋芽子を 思ふ人どち 相見つるかも
(8/1558,沙弥尼等)
 芽子の花 咲きたる野辺に 日晩
(ひぐらし)の 鳴くなるなへに 秋の風吹く
     
(10/2231,読人知らず)
 さ男鹿の 妻整ふと 鳴く音の 至らむ極み 靡け芽子原
(10/2142,読人知らず)
 ますらをの よ
(呼)びたてしかば さをしか(鹿)
   むな
(胸)(分)けゆ(行)かむ あきの(秋野)はぎはら(萩原) (20/4320,大伴家持)
 君に恋ひ 裏ぶれ居れば 敷
(しき)の野の 秋芽子凌ぎ さを鹿鳴くも
     
(10/2143,読人知らず)
 秋芽子の 恋も尽きねば さを鹿の 声い継ぎい継ぎ 恋こそ益
(まさ)
     
(10/2145,読人知らず)
 秋芽子の 咲きたる野辺は さを鹿の 露を別けつつ 嬬問
(つまどひ)しける
     
(10/2153,読人知らず)

田にさく
 秋田刈る 仮廬(かりほ)の宿の にほふまで 咲ける秋芽子 見れど飽かぬかも
     
(10/2100,読人知らず)
 をとめらに 行相の速稲
(わせ)を 苅る時に 成りにけるらし 芽子の花咲く
     
 (10/2117,読人知らず)

庭にさく
 吾が屋戸の 芽子開きにけり 秋風の 吹かむを待てば いと遠みかも
     
(19/4219,大伴家持。六月十五日芽子の早花を見て)
 朝霧の たなびく田ゐに 鳴く雁を 留み得むかも 吾が屋戸のはぎ
     
(19/4224,光明皇后)
 たきそなへ 殖ゑしもしるく 出で見れば 屋前の早芽子 咲きにけるかも
     
(10/2113,読人知らず)
 恋ひしくは 形見にせよと 吾が背子が 殖ゑし秋芽子 花咲きにけり
(10/2119,読人知らず)
 雁がねの 初音聞きて 開き出たる 屋前の秋芽子 見に来(こ)吾が背子 (10/2276,読人知らず)
 吾が屋前の 芽子の花咲けり 見に来ませ 今二日ばかり あらば散りなむ
     
(8/1621,巫部麻蘇娘子)
 吾が屋前に 開ける秋芽子 常有らば 我が待つ人に 見せましものを
(10/2112,読人知らず)
 吾が屋前の 芽子開きにけり 落らぬ間に 早来て見べし 平城(なら)の里人 (10/2287,読人知らず
)
 吾が屋戸の 秋の芽子開く 夕影に 今も見てしか 妹の光儀
(すがた) (8/1622,大伴家持)
 手もすまに 殖ゑし芽子にや 還りては 見れども飽かず 情尽さむ
(8/1633,読人知らず)
 草深み 蟋
(こほろぎ)(さは)に 鳴く屋前の 芽子見にきみは 何時か来まさむ
     
(10/2271,読人知らず)
 わがせこ
(背子)が やど(宿)なるはぎ(萩)の はな(花)さかむ
   あき
(秋)のゆふへ(夕)は われ(吾)をしの(偲)はせ (20/4444,大原真人今城)

  君が家に 殖ゑたる芽子の 始花
(はつはな)を 折りて挿頭さな 客(たび)別るどち
  立ちて居て 待てど待ちかね いでて来し 君にここにあひ 挿頭しつるはぎ
      
(19/4252;4253, 久米広縄と大伴家持の贈答歌)
  秋風の すえ
(末)(吹)きなびく はぎ(萩)のはな(花)
    ともにかざ
(挿頭)さず あ(相)ひかわか(別)れむ (20/4515,大伴家持)

人に贈る
 玉梓の 公の使の 手折りける 此の秋芽子は 見れど飽かぬかも
(10/2111,読人知らず)

七夕
 吾が待ちし 白芽子
(あきはぎ)開きぬ 今だにも にほひに往かな 越方(をちかた)人に
     
(10/2014,読人知らず)
 あきはぎに にほ
(匂)へるわ(吾)がも(裳) ぬ(濡)れぬとも
   きみ
(君)がみふね(御舟)の つな(綱)しと(取)りてば (15/3656,阿部継麿)

月夜の萩
 我が背子が 挿頭
(かざし)の芽子に 置く露を さやかに見よと 月は照るらし
     
(10/2225,読人知らず)
 芽子の花 開きのををりを 見よとかも 月夜の清き 恋益
(まさ)らくに (10/2228,読人知らず)


置く露、置く霜
 このころの 秋風寒し 芽子の花 散らす白露 置きにけらしも
(10/2175,読人知らず)
 秋の野に 開ける秋芽子 秋風に 靡ける上に 秋露置けり
(8/1597,大伴旅人)
 秋芽子の 枝もとををに 露霜置き 寒くも時は 成りにけるかも
(10/2170,読人知らず)
 さを鹿の 朝立つ野辺の 秋芽子に 玉と見るまで 置ける白露
     
(8/1597;1598,大伴家持)
 あき芽子に 置ける白露 朝な朝な 珠としそ見る 置ける白露
(10/2168,読人知らず)
 白露を 取らば消ぬべし いざ子ども 露に争
(きそ)ひて 芽子の遊びせむ
     
(10/2173,読人知らず)
 玉に貫き 消たず賜
(たば)らむ 秋芽子の うれ(末)わわら葉に 置ける白露
     
(8/1618,湯原王)
 朝扉開けて 物念ふ時に 白露の 置ける秋芽子 見えつつもとな (8/1579,文忌寸馬養)
 秋芽子の 上に白露 置く毎に 見つつそしのふ 君がすがたを
(10/2259,読人知らず)
 秋芽子に 置きたる露の 風吹きて 落つる涙は 留めかねつも
(8/1617,山口女王)
 白露と 秋の芽子とは 恋ひ乱れ 別くこと難き 吾が情かも
(10/2171,読人知らず)
 秋芽子の 上に置きたる 白露の 消
(け)かもし(死)なまし 恋ひつつあらずは
     
(8/1608,弓削皇子; 10/2254,読人知らず)
 秋芽子の 枝もとををに 降
(お)く露の 消なば消ぬとも 色に出めやも (8/1595,大伴像見)
 秋芽子の 枝もとををに 降
(お)く露の 消かもしなまし 恋ひつつあらずは
     
 (10/2258,読人知らず)
 吾が屋前の 秋芽子の上に 置く露の いちしろくしも 吾恋ひめやも
(10/2255,読人知らず)
 秋芽子の 開き散る野辺の 暮露
(ゆふつゆ)に ぬれつつ来ませ 夜は深けぬとも
     
(10/2252,読人知らず)

 白露の 置かまく惜しみ 秋芽子を 折るのみ折りて 置きや枯らさむ
     
(10/2099,読人知らず)
 あき
(秋)の野に つゆ(露)(負)へるはぎ(萩)を たを(手折)らずて
   あたらさか
(盛)りを す(過)ぐしてむとか (20/4318,大伴家持)

盛り過ぐ
 朝霧の 棚引く小野の 芽子の花 今か散るらむ 未だ厭
(あ)かなくに (10/2116,読人知らず)
 妻恋ひに 鹿鳴く山辺の 秋芽子は 露霜寒み 盛りすぎゆく
(8/1600,石川広成)
 秋芽子は 盛り過ぐるを 徒に 頭刺
(かざし)に挿さず 還りなむとや
     
(8/1559,沙弥尼等)

花散る
 明日香河 逝き廻
(み)る丘の 秋芽子は 今日零る雨に 落りか過ぎなむ
     
(8/1557,丹比真人国人)
 吾が岳(をか)の 秋芽の花 風を痛み 落るべくなりぬ 見む人もがも (8/1542,大伴旅人)
 秋芽子を 落り過ぎぬべみ 手折り持ち 見れどもさぶし 君にし有らねば
     
(10/2290,読人知らず)
 高円の 野辺の秋芽子 徒に 開きかも散るらむ 見る人無しに
 高円の 野辺の秋芽子 な散りそね 君が形見に 見つつしのばむ
     
(2/231;233, 笠金村。志貴皇子を悼んで)
 指進
(さしずみ)の 栗栖の小野の 芽の花 落らむ時にし 行きて手向けむ (6/970,大伴旅人)
 秋風は 日にけに吹きぬ 高円の 野辺の秋芽子 散らまく惜しも
(10/2121,読人知らず)
 春日野の 芽子し落りなば 朝東
(こち)の 風に副(たぐ)ひて 此処に落り来ね
     
(10/2125,読人知らず)

 さを鹿の 胸別
(むなわけ)にかも 秋芽子の 散り過ぎにける 盛りかも行ぬる
     
(8/1599,大伴家持)
 さを鹿の 心相念ふ 秋芽子の しぐれの零るに 落らくし惜しも
      
(10/2094,柿本人麻呂)
 奥山に 住むとふ男鹿の 初夜
(よひ)去らず 妻問ふ芽子の 散らまく惜しも
     
(10/2098,読人知らず)
 秋芽の 落りの乱ひに呼び立てて鳴くなる鹿の音の遥けさ
(8/1550,湯原王)
 秋芽子の 散り去
(ゆ)く見れば おぼぼしみ 妻恋すらし さを鹿鳴くも
     
(10/2150,読人知らず)
 さを鹿の 来立ち鳴く野の 秋芽子は 露霜負ひて 落りにし物を
(8/1580,文忌寸馬養)
 秋芽子の 咲きたる野辺に さを鹿は 落らまく惜しみ 鳴きぬる物を
     
(10/2156,読人知らず)
 奈何
(な)ど鹿の わび鳴きすなる けだしくも 秋野の芽子や 繁く落るらむ
     
(10/2154,読人知らず)
 雁来れば 芽子は散りぬと さを鹿の 鳴くなる音も 裏ぶれにけり
(10/2144,読人知らず)
 秋芽子の 散り過ぎ去かば さを鹿の わび鳴きせむな 見ずは乏しみ
     
(10/2152,読人知らず)

 真葛原 なびく秋風 吹く毎に 阿太
(あだ)の大野の 芽子の花散る (10/2096,読人知らず)
 秋芽子は 雁にあはじと 言へればか 音を聞きては 花に散りぬる
(10/2126,読人知らず)
 吾が屋戸の 一村芽子を 念ふ児に 見せず殆
(ほとほと) 散らしつるかも (8/1565,大伴家持)
 秋去らば 妹に視せむと 殖ゑし芽子 露霜負ひて 散りにけるかも
(10/2127,読人知らず)
 吾妹児
(わぎもこ)に 恋ひつつあらずは 秋芽の さきて散りぬる 花にあらましを
     
 (2/120,弓削皇子)
 秋芽子を 落らす長雨の ふるころは 一り起き居て 恋ふる夜そおおき
(10/2262,読人知らず)
 藤原の 古りにし郷の 秋芽子は 開きて落りにき 君待ちかねて
(10/2289,読人知らず)
 暮
(よひ)にあひて 朝(あした)(おも)無み 隠野(なばりの)
   芽子は散りにき 黄葉
(もみち)早続(つ) (8/1536,縁達師)

実る
 見まくほり 恋ひつつ待ちし 秋芽子は 花のみ開きて 成らずかもあらむ
(7/1364,読人知らず)
 吾妹子が 屋前の秋芽子 花よりは 実になりてこそ 恋ひまさりけれ
(7/1365,読人知らず)
 吾が屋戸に 開きし秋芽子 散り過ぎて 実に成るまでに 君にあはぬかも
     
(10/2286,読人知らず)

色づく
 あまくも
(天雲)に かり(雁)そな(鳴)くなる たかまと(高円)
   はぎ
(萩)のしたば(下葉)は もみちあ(敢)へむかも (20/4296,中臣清麿)
 雲の上に 鳴きつる雁の 寒きなべ 芽子の下葉は 黄変
(もみち)ぬるかも (8/1575,読人知らず)
 吾が屋前の 芽子の下葉は 秋風も 未だ吹かねば 此くそもみてる
(8/1628,大伴家持)
 このころの 暁(あかとき)露に 吾が屋前の 芽子の下葉は 色づきにけり
(10/2182,読人知らず)
 このころの 五更
(あかとき)露に 吾が屋戸の秋の芽子原 色づきにけり (10/2182,読人知らず)
 秋風の 日にけに吹けば 露重
(しげ)み 芽子の下葉は 色づきにけり (10/2204,読人知らず)
 秋芽子の下葉紅(もみちぬ)あら玉の月のへゆけば風疾みかも (10/2205,読人知らず)
 秋芽子の 下葉の黄葉
(もみち) 花に継ぎ 時過ぎ去かば 後恋ひむかも
     
(10/2209,読人知らず)
 さ夜深けて しぐれなふりそ 秋芽子の 本葉の黄葉 落らまく惜しも
(10/2215,読人知らず)

冬のすがた
 百済野の 芽の古枝に 春待つと 居りし鶯 鳴きにけむかも
(8/1431,山部赤人)


その他

 かくのみに ありける物を 芽子の花 咲きて有りやと 問いし君はも
     
(3/455,余明軍。大伴旅人を悼んで)
 率爾
(ゆくりなくも) 今も見が欲し 秋芽子の しなひにあらむ 妹がすがたを
     
(10/2284,読人知らず)
 秋芽子の 花野のすすき 穂には出でず 吾が恋ひ渡る 隠りつま(妻)はも
     
(10/2285,読人知らず)
 宇陀の野の 秋芽子しのぎ 鳴く鹿も 妻に恋ふらく 我には益さじ
 (8/1609,丹比真人)
 おくれ居て 吾はや恋ひむ 稲見野の 秋芽子見つつ 去
(い)なむ子ゆゑに
      
(9/1772,阿部広庭か)

 人皆は 芽子を秋と云ふ よし吾は を花が末を 秋とは言はむ
(10/2110,読人知らず)
 蜓(あきつ)野の 尾花苅り副え 秋芽子の 花を葺かさね 君が仮廬(かりほ)
     
(10/2292,読人知らず)
 秋の野を にほ
(匂)はすはぎ(萩)は さけれども
   見るしるしな
(無)し たび(旅)にしあれば (15/3677,読人知らず)
 かへ
(帰)りき(来)て 見むとおも(思)ひし わがやど(宿)
   あきはぎ(秋萩)すすき ち
(散)りにけむかも (15/3681,秦田麿)
 いはせ
(石瀬)野に 秋芽子しのぎ 馬並めて 始鷹猟(はつとがり)だに せずや別れむ
     
(19/4249,大伴家持)
 宮人の そでつけ
(袖付)ごろも(衣) あきはぎ(秋萩)
   にほ
(匂)ひよろしき たかまと(高円)のみや(宮) (20/4314,大伴家持)
 


旋頭歌

 さをしかの 芽に貫き置ける 露の白珠
   あふさわに 誰の人かも 手に巻かむちふ
(1/1547,藤原八束)
 



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